「電波男」その3

 誤解していたと言うか、字面をストレートに読み直したらようやくこの本の内容を少し理解出来た様な気がします。本田氏の言う愛ってのはいわゆる恋愛の愛ではなくて、「無償の愛」「真実の愛」の事だったのか…(最初からオビに「真実の愛を求め」って書いてありますな…)。そしてそう理解した直後から、小一時間涙が止まらなくなりました。
 そりゃ、他人に無償の愛を期待したらそれは裏切られますよ、他人にそこまでは望めません。人間が人生で無償の愛を受けられるチャンスは、普通の人にとっては生みの親、育ての親から受けられるそれのただ一度なのだけれど、本田氏は最初からそれを失っていた。最初から得られなかった、そして2度と手に入る事の無い無償の愛を求めて、苦しんで来たのか…(涙)。本田氏の言う「愛」が無償の愛の事であるのなら、幼い頃に既に失われていたそれは、彼の人生では(映画や伝記になるレベルの)余程のラッキーな出会いが無い限り三次元空間では2度と手に入らない物でしょうし、それでも無償の愛を求めるなら二次元、仮想の世界に向かうしか無いと言う話は自分も納得できます。
 しかしそれでも、本田氏には三次元を諦めないでいて欲しい。あなた自身は多分もう得られないだろうけれど、あなたが無償の愛を作る事は出来ると思うのです。具体的に言うと、何とか自分が自分で居られるパートナーを見つけて、そして子供を育てて欲しいと思う。
 いや子供なら無償の愛を与えてくれるとか、子供になら無償の愛が与えられるって話じゃないですよ。きっと子供を育てても、そこであなたが得られる感情は「子供に対する責任感」やら「似た顔に対する親愛の情」「小さい動物を可愛いと思う気持ち」や「時間経過と共に生まれる愛着」であって「こんなのは無償の愛じゃねー」としか思えないかも知れないけれど、そのときあなたの子供が手にしている物は、それが正にあなたが求めて止まなかった「無償の愛」になり得るのでは無いかと思うんですよ上手く言えないけど!
 あなたはもう安心できるだれかに抱きしめてもらう事は出来ないかも知れないけど(泣)、誰かを抱きしめて安心させてやる事は出来ると思うんですよ(泣)。あなたが得られなかった物を得られる人間を、この世に増やす事が出来るかも知れない。愛され慣れていない人間が人に優しくするのは難しいとは思うけれど、自分が欲しかった物を与えるって事を外さなければきっと何とかなると思います。
 何とか二次元を活用して気力を保ちつつ、三次元を諦めてしまわないことを切に願います。そして幸せを実感できる人間を増やしてやって下さいよ。

(追記)
 excite booksの「真実の愛を求め、俺たちは二次元に旅立った!http://media.excite.co.jp/book/interview/200503/」が面白かった。後ろ向きなのか前向きなのか分からんが妙に清々しい読後感のインタビューでした。あとがきを付けた意図や「恋愛資本主義がオタク資本主義に入れ替わっても搾取される側なのは変わらんのでは?」など、引っ掛っていた部分に対する回答が網羅されてて妙にスッキリしてしまった(自分が)。この日の日記もいい加減ずれた内容になってますが、これであとがきの意図に反した反応の例として逆に面白い物になってしまった気が。